現場で起きやすい課題
三重県には大手メーカーの取引先として長年培った技術力を持つ製造業が数多くありますが、生産計画や工程管理を紙の日報や担当者の経験に頼っている現場もまだ少なくありません。熟練工の勘に支えられた品質管理は強みである一方、担当者の高齢化や退職によってノウハウが失われるリスクも抱えています。取り組みの出発点としては、生産設備を新しくするような大きな投資よりも先に、日々の生産実績や不良率といったデータを記録・蓄積する仕組みを整えることが重要です。データがなければ、どこに改善余地があるかを客観的に判断できません。
最初に整理すること
実務で取り組みやすいのは、生産数量や稼働時間、不良品の発生状況を簡単な記録フォームやセンサーで日次集計し、月次で傾向を確認する仕組みづくりです。取引先から求められる品質記録や納期管理の精度を高めるうえでも、こうしたデータの蓄積は役立ちます。設備投資を伴うIoT機器の導入を検討する際は、まず小規模なラインや工程で試験的に運用し、効果を確認してから展開範囲を広げる進め方が、投資リスクを抑えるうえで有効です。熟練工の判断基準を言語化し、データと照らし合わせて記録に残す取り組みも、技術継承の観点から価値があります。
光の道具箱で広げる改善
製造業のDXは、設備を入れ替えることそのものが目的ではなく、現場の判断材料を増やし、技術継承をしやすくすることが本質的な狙いです。データに基づいて工程の課題を可視化できれば、限られた人員でも改善の優先順位をつけやすくなります。取引先や地域の支援機関が提供する情報も参考にしながら、自社の生産規模や体制に見合った範囲で段階的に取り組みを進めることが、着実な成果につながります。まずは一つの工程のデータを記録することから始め、そこで得た知見を他の工程に広げていくとよいでしょう。



