投稿日:2019年5月11日
フリーランスエンジニアにとっての「技術力」の位置付け
今日は仕事で一つ大きな失敗をしてしまいました。その原因をたどっていくと見えてきたものがありますので書いてみたいと思います。
技術力へのこだわり
私が自分の会社(屋号)で最も強みとして押し出している部分は「技術力」です。その理由としては、これまで自分がIT企業の中で社員として培ってきたプログラミングやシステム設計の技術を生かした仕事がしたいと常々考えていたからです。技術力がなければ難しい課題をクリアすることができないため課題解決における手法を実現するベースとなる能力としては必要な力になってきます。
「技術力が大事だ」と心の中で考え続けてはきたのですが、今日の失敗で気が付けることが一つありました。それは仕事における「技術力」に対する優先順位です。
技術力への優先順位が高すぎた結果
結論からお伝えすると、私は技術力に対する優先順位が高すぎました。
技術力に対する優先順位が高すぎると何が起きるか書いてみたいと思います。
仕事の3要素を情報処理技術者試験的に分解してみる
情報処理技術者試験は次の3分類に分かれています。
- 戦略/ストラテジー
- 管理/マネジメント
- 技術/テクノロジー
それぞれの効能はというと次の通りです。
戦略/ストラテジー
戦略とは未来を考える力に他なりません。市場と競合と自社を理解し、自社の進むべき道を考え、この先を生きながらえるための道を模索し、より素晴らしい未来に向けて活動していくために考えを巡らせて未来にやるべきことを決めることを「戦略」と言います。
戦略が欠如した状態では企業は未来を見出すことができないため、行き当たりばったりになってしまいます。未来を想定していないため、外部からの刺激に対応できずにたまたま負の循環に陥ってしまった場合にはその負の循環を受け入れるしかなくなってしまいます。そういった負の循環に陥らないために必要な能力が戦略に関する資質であり能力です。
管理/マネジメント
管理とは、戦略で導き出した目指すべき未来や仕事の完成形に向けてより具体的な計画を引き、確実性をもってそれら未来を引き寄せるために行う活動全般のことを指しています。企業の成長を考える上では、目指すべき未来がなければ話にならないのは当然ですが、未来を導けたところで管理的に未来を目指すことが出来なければ確実にその未来に向かって進んでいくことはできないでしょう。
したがって、計画を見える化することも大切なことですし、関係者間で必要なコミュニケーションを円滑にすることや利害関係者間の利害調整なども管理能力の一つの部分です。そして私に圧倒的に足りない部分は、計画力と計画を推進する能力です。自分を過信しすぎて無理のある計画を引くことが慢性化していて、計画の破綻をよくきたしています。
技術/テクノロジー
技術とはプログラミングの技術などIT技術の各論のこともそうなのですが、ここでは課題を解決するための能力全般のことを指します。IT技術は企業の課題を解決するためにありますから、データベースやネットワークの技術のことを理解していても、それらを企業の役に立つ姿に変換させて、企業においてプラスの成果に繋げることが出来なければ意味がありません。
仕事のタスクを3分類に当てはめて優先順位をつける
技術的なタスクというのは、実際に情報システムを構築したり、ウェブサイトを制作したりといったIT企業における顧客に提供する成果物を作る工程全般を指しています。IT企業だからと言ってプログラムを書くことが主要業務かといえば決してそうではありません。実際にプログラムを書く前段階やプロジェクト推進の段階において必要な作業は別に多くあります。
戦略を立案する
何を作るかを決める工程こそが最も大切です。成果の出る情報システムを構築するためには戦略を練る時間を十分に割く必要があります。何を作るかを考えることを抜きにしては決して良い仕事にはつながっていきません。スモールスタートという言葉がありますが、戦略なき安易なスモールスタートは多くの場合に失敗を招く可能性が極めて高いということを肝に銘じておきましょう。ちゃんと頭で考えてどうすれば合理的かを導き出しておく必要性は絶対です。
プロジェクトを計画通りに推進する
戦略が立案できたら計画通りに開発制作を進めていく必要があります。ここで必要となってくるのが管理に必要なコミュニケーションを割くための時間です。顧客と自社の間もそうですし、自社内での管理する人と作業をする人との間の関係でもコミュニケーションは必要になります。多くの職場ではこれらコミュニケーションが欠如することによってうまく仕事を推進することができない状況も多くあることが現実に起こっています。
プロジェクトの計画を立てるためにはWBS(Work Breakdown Stracture)を用いてタスクレベルに作業を分解する必要もあるでしょうし、WBSに紐づける形でガントチャートを引いて日程計画を見える化することも有効かもしれません。マネジメントを行う上で利用するツール選びが非常に重要になってきます。IT企業でよく利用されるGoogleのGsuiteにはガントチャートが引く機能がないためGoogleカレンダーだけではプロジェクト単位の日程計画が見える化しずらい状況にも直面します。平行して複数のプロジェクトを推進するような立場で仕事をするようになるとこれらの問題は顕著になってきます。システマティックに案件を合理的に進めるための土壌づくりは非常に難しく、高度なスキルが要求される領域だと言えるでしょう。
技術に固執すると色々と破綻する
技術に固執していいのは、ちゃんと管理してくれるパートナーで信頼できる方がいるときや未来を導いてくれる方で信頼できるパートナーがいるときだけです。とはいうものの、誰か自分以外の他人に頼り切るのは危険なので、最低限自分のことは自分でやるということをやらないといけないですね。
技術に固執すると管理や戦略が疎かになります。固執するのはよくないです。技術は外部に切り出しても回るけど、戦略と管理は外部に切り出せるものじゃない。これはプログラマーやコーダーとして働く場合も同様です。きちんと自分の歩いていく道くらいは、自分の頭でちゃんと考えて進んでいく必要があるのではないでしょうか。
仕事に関する私の中の優先順位の問題
昨日までは以下の優先順位で行動していたということがなんとなく把握できてきました。
戦略 = 技術 > 管理
「技術」にはこだわりを持ちたいという想いからか「管理」が疎かにされていたようで、確実に計画を遂行したり、顧客などの利害関係者との関係維持など他社とのコミュニケーション面における課題を先延ばしにしたりする傾向があったようです。技術にこだわりを持つことは素晴らしいことだとは思いますが、チームや顧客あっての仕事です。優先順位がおかしい。
本来あるべき姿は以下の優先順位であると私は考えています。
戦略 = 管理 = 技術
当然なのですが、仕事にはバランスが必要です。「大胆な戦略によって未来を導き、緻密な管理によって計画的に未来を引き寄せ、鋭い技術力で課題を解決していく」ことが基本だと思うのですが、これらはどれか一つでも欠けてしまうと推進力を失ってしまいます。仕事仲間という存在はいるものの、フリーランスは個人の体一つで成り立っているのですから、誰かに依存することなく高いレベルでバランスよくこれらを維持できる能力は必須でしょう。
すなわちバランスを失ってしまえばどこかで無理が出て、最終的に顧客やパートナーに迷惑をかける事態に収束されていくということが避けては通れません。そのような事態に多く陥ることがあるのであれば、戦略と管理と技術のバランスを再度確認し、自分の中での優先順位を見直してみるとよいかもしれません。
今後の体制に向けた優先順位
戦略 = 管理 > 技術
全てバランスがとれているのが一番ではありますが、ある領域においては基本的に自分は技術力が他の方よりも優れている場合が多いと感じています。したがって、技術に対してはこれまでに十分に時間を投資してきたため、技術を外部の方に委託することがおそらく容易なのではないかということがなんとなく想像ができています。
想いを形にして実現していく上で外部に切り出せないもの
想いを形にして実現していく上で外部に方に業務委託という形で切り出せないものは、戦略と管理の2つです。
戦略とは想いそのものであり、外部の方に委託した段階で自分の想いではなくなってしまいます。スタートアップの小規模な組織においては管理も戦略を考える方自身で地道に行っていく必要があるでしょう。最低限自分自身で想いを巡らせ、形にするために計画を引いて実現していくことが出来なければ、何かを成し遂げることなど絶対にできはしません。
だけど「技術」は外部に切り出せる
技術にこだわりを持ってやってきたつもりでしたが、「技術」、すなわちITにおいては実際に手を動かして開発制作する工程だけは外部の方に委託する敷居が最も低いです。必要なのは戦略と管理に加えて、技術者を雇うお金と時間です。
まとめ
今回の失敗で再び大きく頭を打って失速しそうになりましたが、色々考えた結果、また一つ結論を出すことができ誰かに語ることができるネタが一つ増えました。
結局のところ、戦略、管理はフリーランスにとっては絶対に必要な部分であって欠かすことができません。技術を強みにするフリーランスであっても、戦略と管理は絶対に必要です。
各所から求められているニーズに応えていくためには自分の時間の使い方を合理化していく必要がありますが、2年弱のフリーランスの営業活動の結末として自分のキャパシティはようやく満タンを迎え、この先の一歩を考えると「仕事を選ぶ」か「組織を拡大する」かの2択を迫られています。
「仕事を選ぶ」ということは付き合わないお客様を選ぶということであり、仕事の単価の話をすれば、単価の低いお客様を切り捨てて、高いお客様を選択するということになるでしょう。付き合うかどうか価値があるかどうかという視点からすれば、付き合う価値がないと判断したお客様を切り捨てて、自分のプラスになるお客様とだけお付き合いするという選択になるかと思います。
個人として最も効率の良いフリーランスの戦略を考える上では上記は鉄板の戦略であり、多くの方がそうすべきと私に説明する機会を何度も経験してきましたし、多くの方はそのような選択を選んでいるように思います。逆にこの選択をしないことは茨の道でもあるし、大変さを進んで買っているようなものだとも考えられます。ただ、道はもう一つあります。
「組織を拡大する」ことができれば、現状のお客様とのお付き合いを残したまま新たなお客様と一緒に仕事をすることが可能になります。
私は現在こちらの選択を選ぼうとしていますが、巨大な組織を作るつもりなどさらさらありません。自分一人じゃ限界に達しているからもう少しチームのサイズを大きくして自分のやりたいことを効率よく実現していく土壌を作りたいだけです。自分なりに頭を捻って考えた案を文章にまとめ説明し、自社サービス開発のプロジェクトは既に動き出していますが、何とか最後まで形に出来るようにもっていきたいと思います。
現状では業務委託のパートナーさんを見つけたりコンピュータ専門学校の学生をアルバイトとして雇ったりしていきたい気持ちではいるので、とりあえずこちらもチャレンジしてみたいと思います。目指すべき未来はある程度見えているので後は粛々と実行あるのみです。