投稿日:2019年4月5日
ウェブサイトを取り巻くすべてをデザインすること|真のウェブデザイナーとは
ウェブデザイナーってどんな仕事だと思いますか?
ウェブサイトのレイアウトを描く人とか、ウェブサイトを利用するユーザーを想像する人とか、ウェブサイトを利用するユーザーを満足させる人とか、いろいろあると思いますが、もう少し広い意味でのウェブをデザインするという目線からウェブデザイナーの守備範囲について語ってみたいと思います。
実際にそのような人材がいるかも現実にいるかどうかも私は知りませんが、私が目指しているウェブデザイナー像というものについ書いてみたいと思います。
ウェブデザイナーがデザインするもの
ウェブのすべてをデザインする人材
ウェブデザイナーという職種名なのでウェブに関するすべてをデザインしたいと私は考えているのですが、一般的には次の3つのうち1番目の項目のみがクローズアップされる場合が多いと思います。2番の項目についてはウェブマーケターと呼ばれる職種の方が対応する領域だと思うし、3番の項目については企業のウェブ担当者が担当する領域ですよね。
- お客様目線でのウェブサイトに関するすべて
- 集客目線でのウェブサイトのすべて
- ウェブサイトの運用に関するすべて
でも、みなさんご存じかどうかはわかりませんが、都市圏ではなく地方都市における中小企業において2と3の存在が非常に不足しているということが当たり前という状況はご存知でしょうか?
1番に関しては世の中の認識がそうなっているため、みなさん精いっぱいそのような職種を目指すことが多いのですが、実際に田舎の中小企業の中に入ってみると圧倒的に足りない存在は2と3の2つになるのです。1は外部リソースとして地域の広告デザイン制作会社や印刷会社に依頼すれば何とかなるでしょう。しかし2と3を専業としている会社は田舎にはほぼ皆無なのが現実です。
そこで必要になってくるのが私が「ウェブ人材」と呼んでいる人材です。ウェブ人材とは広義でのウェブデザイナーのことで、本記事で語る「ウェブのすべてをデザインする人材」のことを指しています。
なぜウェブのすべてをデザインできる必要があるのか
上記にも書いた通り地方都市には完全にウェブ人材が不足しています。作れる人は若干名いますが、ウェブを活用した集客における成功事例を持っているウェブ人材、すなわち2の成功事例を持っている人材が圧倒的に不足しています。そして、そのような2の成功事例を持った人材のアドバイスがあったとしても実際に企業で運用を回すフェーズになるとその余力がありません。当然ながら3となるウェブ担当者も不在の状況が多くウェブ担当者だけに予算を割くことなどできないのです。予算に関して言えば2のウェブマーケターだけに予算を割くことなども不可能です。
すなわち予算の関係で1も2も3も全部できる人材が地方の中小企業において求められていると言えるでしょう。
そんな「ウェブにおけるすべてをデザインできるウェブデザイナー」のスキル領域について簡単に見ていくことにしましょう。
ウェブ人材/ウェブデザイナーのスキル領域
ウェブ人材のスキルマップは全部で以下の3点に集約できます。
- ウェブ制作
- ウェブマーケティング
- ウェブ運用
これらはどれかが欠けてしまうとウェブサイトを活用したマーケティングの成功体験へ繋げていくことが一気に難しくなります。なので、どれも満遍なくバランスよく対応していく必要がありますので成果に繋げていくという目線においては不測の無いような体制を構築するように注意してください。
それではウェブ人材/ウェブデザイナーのスキルについてそれぞれ見ていくことにしましょう。
ウェブ制作スキル
制作管理スキル
ウェブサイトの制作をはじめとして、作業の進捗や全体のスケジュールの管理、予算の管理、お客様との関係の管理、制作メンバーとの関係の管理など、各種管理が必要になります。これらウェブ制作プロジェクトのプロジェクトマネジメントスキルについても制作を行う上では必須の能力となってきます。
- スケジュール管理
- 予算管理
- 制作物の品質管理
- プロジェクトの品質管理
- お客様との関係管理
- 制作メンバーとの関係管理
UXデザインスキル
UXデザインのスキルを持った人材とは、お客様目線で物事を考えて戦略に落とし込み、それら戦略をデザインデータに落とし込んで関係者間で明確な意思疎通を図ることができる能力を持った人材のことを指しています。UXデザインの各領域において、欠かせないのが戦略を考えるためのフレームワークが頭の中にあるかどうかということと、それらをデザインデータに落とし込むためのツールを操作する能力とデザインに関する経験とセンスです。
- UXデザイン戦略立案能力
- デザインに関する各論の知識と経験やセンス
- デザインツールの操作技術
ウェブプログラミングスキル
最近ではノンプログラミングでウェブサイトを作ることができるプラットフォームが増えてはきましたが、ウェブ戦略上それらのプラットフォームで実現できることは非常に限られており、最大限の効果を発揮させるためには様々なプラットフォームを組み合わせて利用したり、プラットフォームに寄らない自由自在なオーダーメイドのウェブサイトの制作などが条件になってくる場合も少ないでしょう。したがって、HTMLやCSSといったコーディングデータを作成するためのスキルがなければウェブサイトを自由に作ることができない場合が多いと思います。
それらに加えてウェブ運用を効率化するための仕組みとしてCMSを自在にカスタマイズする能力が必要になったりするわけです。運用を楽にするために業務改善を行うために業務システムを構築することもあるかもしれません。それらを実現するためのスキルがウェブプログラミングのスキルになります。
- ウェブ系開発言語やマークアップ言語のプログラミングスキル
- CMSを自在にカスタマイズする能力
- 業務システムを自在に構築する能力
- 業務改善を行うための課題定義能力と課題解決力
ウェブマーケティングスキル
集客スキル
ウェブサイトへの集客経路から考えると以下のような7項目が集客スキルとして必要であることがわかります。
- 自然検索を増やすためのSEO
- ソーシャルメディアにおけるインフルエンサー(ソーシャルメディアからの流入数を増やすためのフォロワーを増やすための各種施策)
- インターネット広告運用による広告経由の流入と検索クエリから考える市場ニーズの把握
- メルマガやステップメールなどの活用によるメールマーケティング
- 外部サイトに掲載するための施策を中心としたリファーラル対策
- スマホアプリなどのダイレクトアクセスの流入を増やすための施策
- 訴求力の高いYouTube動画などを経由したアクセスを増やすための施策
これら集客のスキルはすべて試すには時間がかかるためウェブサイトで訴求する対象となる製品やサービスまたは企業と相性のよい施策を考えていく必要があると思います。ライターとしての素養があるメンバーが運用スタッフにいるのであれば長期的なコストメリットを狙っていくという目線からSEOは効果的であると考えられますし、現代におけるソーシャルメディアの威力を考えればTwitterなどのSNSにおけるインフルエンサーとして社員を育てるという目線も効果的かもしれません。メールマーケティングもまだまだ現役の手法だと言えますし、外部サイト掲載を中心としたリファーラルの対策も必要でしょう。最近であれば動画の効果が著しいという話をよく伺うようになってきているので動画を用いた集客活動を主軸に展開していくことも有効だと思います。
上記の各施策でできる範囲のことに満遍なく取り組むことによってできる限り広く網を張るような集客展開ができればよいと考えています。集客を行うということは情報発信を行うということとも密接な関係があるのですが、企業の広報担当としての役割と共に、お客様やパートナーを引き付ける魅力を発信し続ける事の重要さとそれによる集客の威力を実感できればと思います。
製品・サービス開発力
集客を行おうとしても、その集客で宣伝する対象の製品やサービスが魅力あるものでなければ集客は絶対に成立しません。製品・サービスがすぐれたものでない場合には真っ先に取り組むべき内容は製品・サービスのテコ入れとなり、これが最優先事項です。ウェブマーケターだから関係ないと考えずに、きちんと根本原因まで掘り下げて魅力が十分に引き出された製品やサービスにしていくという目線がどうしても欠かすことができません。
- 製品・サービスの開発支援(ユーザーニーズやユーザー体験目線を提供し商品力を高める努力を行うこと)
ウェブ運用スキル
以下の情報発信力と柔軟なサイト改修体制はウェブ制作とウェブマーケティングに密接に関連しています。
- ウェブ制作:柔軟なサイトの改修体制
- ウェブマーケティング:情報発信力
制作とマーケティングのスキルを高いレベルで維持しながら継続していく努力こそがウェブ運用スキルだと言えるのではないでしょうか。すなわちこれらを遂行していくためには普通に考えると両者に精通しているウェブ人材が必要と考えるのが自然なところですね。
柔軟なサイト改修体制
さて、情報発信を行う場合でもCMSの枠組みだけで完結できるものだけではありません。新製品が発表されたのであれば、新製品をわかりやすく訴求するためのランディングページを作成する必要性などもあるでしょうし、その場合にはクリエイティブの品質が非常に重要になってきます。そのような場合にスムーズに柔軟に制作を行える体制が整っているかどうかは非常に重要な要素です。もっともよいのは制作者が社内にいる場合や自分自身で制作ができる場合ですね。中小企業は人的リソースも非常に限られているのが普通ですから限られたメンバーと予算の中で何かを成し遂げるためには自分というリソースを有効活用していく以外に道はありません。日々勉強し努力を重ねてできることを増やしていくことをしなければウェブ運用で成功をつかむことは決してできないでしょう。
またチームを拡大するという目線では仲間を見つけてきたり、仲間に引き込む能力も必要かもしれませんね。ウェブ運用に必要なメンバーを確保して一緒に活動していくためのコミュニケーションに優れているメンバーがいれば人的リソースの確保も容易になると思います。それ以外では、会社の中でウェブ運用で成果を出すために必要な予算を確保する能力なども必要なスキルになるので企業のウェブ担当者としてその認識は頭の片隅に置いておいていただけるとよいかと思います。
- ウェブ運用にかける熱い想い
- ウェブ制作スキル
- ウェブ制作スキルを学習するスキル
- 仲間を見つけて引き込むスキル
- 予算確保スキル
情報発信力
ウェブ運用スキルのうち中心となるスキルが情報発信力です。WordPressなどのCMSによってブログが構築されている場合にはブログを書く時間を投資するだけで情報発信を行うことができます。ソーシャルメディアの活用においては情報発信するネタさえあればフォロワーさんとつながっていくことができますし、魅力的な発信ができればシェアしていただけることによって広く拡散させることが可能になります。お金をかけることができるのであればインターネット広告の出稿も一つの手段となるでしょう。
大事なことはどのような情報発信の手法を用いるにしても、中心となるネタを準備する労力は絶対に必要になるし、それらをユーザーにとってわかりやすい形でユーザーに届けていく努力を行う必要性があるということは外すことができません。
またウェブサイト運用だからと言ってオフラインで活動してはいけないわけではありません。企業の広報担当としてオフラインでの情報発信にも力を入れるべきです。勉強会を主催したり、セミナー登壇したり、といった活動を行い、それらの活動をさらにウェブで発信するという相乗効果を生み出していくことによってより情報発信の効果を高めていくことができると思います。
- ブログ執筆スキル
- ソーシャルメディアアカウント運用スキル
- インターネット広告管理スキル
- セミナー登壇などのオフラインでの情報発信スキル
- その他情報発信スキル
企業を理解し表現する力
そして最終的にもう一つ必要になるのが企業理念などを深く愛し、心からその企業が作る製品やサービスを良いと感じることができる心であったり、企業の良さを周囲に伝えようとする心意気みたいなものが最も求められるところになります。結局のところ、制作とマーケティングの二つだけあってもまだ足りないのです。一番大事なところは、企業の奥底にある一番中心になる部分です。ここを見失ったりするとマイナスの情報発信になる可能性もあります。
したがって、最終的にウェブ運用を行う企業のことを深く理解している必要があるため、長い時間をかけて社長との関係を築く必要性があったり、企業担当者との関係を育てていくという視点が必要になります。心と心がつながっていなければよいウェブ運用には絶対につながっていきません。ベストな状況は、社長自身がウェブ運用の担当者になることや、会社のことを心から愛している社員などがウェブ運用の担当者になることです。
- 企業/製品/サービスを心から愛すること
まとめ
広義のウェブデザイナーとしてウェブ全体をデザインする仕事として参考までにその要素を上げてみましたが、今現状で私が考えられる領域はこの程度の内容です。
私も一端のウェブ制作者なのですが、制作者目線だと制作スキルに加えてマーケティングに職務を拡大していきたいと考える人が一定数いると感じています。ただ、先ほど上記で挙げた通りウェブ制作とウェブマーケティングだけではウェブ戦略は失敗に終わってしまいます。ウェブ運用の存在が不足いているからです。
一番数が足りている人材はウェブ制作者だと感じていますし、次に多いのはウェブマーケターだとも感じています。全く数が足りないのはウェブ運用者やウェブ運用を推進する役割を担う人材と言えると感じています。結局のところ企業にウェブサイトを販売したところで活用するための運用スタッフが存在しなければ成果に繋げていくことは難しいと考えています。そんな運用面での支援をどのように企業様に向けて行っていくかが地域の中小企業様におけるウェブサイト活用上の最大の課題だと私は認識しています。
地域でローカルビジネスを展開するお客様のお役に立つことを考えると、どうしても予算を圧縮するために幅広いスキルが必要になってきますので、現状だけのスキル領域だけで満足せずにどんどん知識と技術を拡大して多くの課題に立ち向かえる能力を身に着けて頂ければと思います。
これらの課題を解決するためのソリューションを考えて自社のサービスとして打ち出すことができれば周囲の多くの中小企業様のお力になれると考えておりますので全力で課題解決に向けて考えを巡らせることを今後も継続していきたいと思います。