投稿日:2019年6月10日
教員免許更新講習「参加・発信型のICT学習利用」を受講して
初めての教員免許更新講習を三重大学にて受けてきました。三重大学教育学部教授の須曽野仁志先生による「参加・発信型のICT学習利用」という90分のセッションを4本組み合わせた6時間の講習です。
三重大学の学習環境
三重大学の中に初めて入りましたがさすがに国立大学ということだけあって設備は非常に素晴らしいものでした。情報学習室内に備えられた最新型のパソコン140台、教壇には書画カメラやスクリーン3枚、教室の後ろにもスクリーン2枚完備の素晴らしい学習環境であったように思います。
三重大学は学習に関する基盤システムとして、OSS(オープンソースソフトウェア)のLMS(学習管理システム)である Moodle をいくつか立ち上げて利用しているようです。今回の講義でも Moodle を利用して受講生にファイルをアップロードさせたり、レポートを書かせたりといった使い方をしていました。
今回利用した三重大のMoodleはバージョン3.5の以下となります。
https://moodle.mie-u.ac.jp/moodle35/
Moodleについてはこちらをご覧ください。
講習内容
教育工学についての導入
デジタルネイティブとデジタルイミグラント
私の生まれた年は西暦で1984年ですが、日本における1980年以降に生まれた年代のことをデジタルネイティブと呼ぶようです。デジタルネイティブは生まれながらにしてデジタル機器などのデジタル環境に囲まれて成長してきた世代のことで、一般的にはデジタル環境に慣れ親しんでいるという認識です。デジタルネイティブにも10年おきくらいに3つの世代に分けられ、最初の10年はパソコンを利用した環境に慣れ親しんでいる世代、次の10年はスマートフォンなどのモバイルデバイスに慣れ親しんでいる世代、それ以降はYouTubeやニコニコ動画などの動画による影響を生活の中で多分に受けて成長してきた世代のことを指すようです。
また、デジタルネイティブに対してデジタルネイティブ世代よりも前の世代のことをデジタルイミグラントと呼ぶようです。デジタルイミグラントはコンピュータなどのデジタル技術がまだ存在しなかった時代に生まれ、それらの無い世界で成長してきた世代です。現代の時代の流れ的にIT活用が必須であると個人的には考えていますが、まだまだ活用ができていないデジタルイミグラント層は爆発的な数がいらっしゃる雰囲気がしています。特に地域においてはその傾向が強いのではないでしょうか。
また、私が生まれた1984年は任天堂がファミリーコンピュータを発売した1983年の翌年に当たり、家庭用のコンシューマーゲームの聡明期に当たります。私たちの世代はファミコン、スーパーファミコン、プレイステーション、ニンテンドー64、ニンテンドーゲームキューブ、プレイステーション2辺りまでが保育園から大学時代までに遊んできた家庭用のゲーム機となりますが、これらデジタルゲームの技術の発展と共に成長を重ねてきた世代だと言えるでしょう。私の親は家庭用ゲームから私を離そうとした結果、高校まではあまり自由にプレイさせていただける環境にはありませんでした。その結果別の何かに取り組むことを強要されて成長してきたわけですが(例えば音楽とか、音楽とか)、大学に入って一人暮らしをするようになるとこれまでの欲求が爆発してゲーム三昧の日々を送っていた記憶がありますね。大学のツレと大学の講義以外の時間はファイナルファンタジー11などのオンラインゲームの世界で大活躍していた時代です。
デジタルネイティブ(Wikipedia)
書画カメラを利用したプレゼンの授業
1枚の画像をより多くの人に見てもらうにはどうしたらいいか
こちらのセッションは3~4名のグループに分かれてのグループワークでした。先生から「一枚の画像をより多くの方々に見てもらうためにはどうしたらよいか」という共通の課題を出されて、それらをグループに分かれて一枚のA4の白い紙の上でプレゼンするというものです。プレゼン方法は一枚のA4の紙にサインペンで絵や文字をうまく組み合わせながら書いたものを書画カメラを経由して前の大きなスクリーンに映し出しながらプレゼン担当者が説明するというものです。説明時間は1分程度に短くまとめることを想定しています。
やはりICT活用は難しいのでサインペンで手書きしたものを書画カメラとスクリーンといったデジタルデバイスを利用して慣れ親しむというところから始めるのがよいということでした。実際に子供たちにグループワークで書かせたものを書画カメラを使って発表するといったことに取り組んでいる学校もあるようです。
3Sカードの活用法
1つ前のセッションの内容は、課題を1枚のA4の紙に自由に書くということでしたが、何もないところから書くのは発想力や画力も求められて難しいですよね。なので、少し敷居を落とすためのツールとして須曽野先生方が開発された3Sカードというツールを使って再度書画カメラでのプレゼンを行いました。
3Sカードとはテーマに対して3つだけ端的に魅力をプレゼンするため内容を書くためのカードです。スマホやタブレットのアプリかもされているので以下をご確認ください。
デジタル3Sカード
https://www.slunecnice.cz/sw/dejitaru3skado-ios/
今回講義内で取り上げたテーマは「思い出の博物館/オススメしたい博物館」でした。この内容について全員が3Sカードにサインペンで端的にプレゼン内容を記載し、1分程度に内容を膨らませながら説明するといったことを行いました。A4サイズなので書画カメラにも対応していて、子供たちにプレゼンを学ばせるためには素晴らしい教材だと感じましたね。
一方通行で先生から子供たちにインプットする内容を教えるだけの授業ではなく、子供が自らプレゼンを行い、自分の頭で考えたことを誰かに伝えていくといった新しい取り組みをされていました。実際にプレゼン内容を考えたり、発表したりすることをITツールを絡めて行うことが今現代の企業活動にも関連していると考えると一本筋が通っているのではないかと感じましたね。魅力的でした。
今回の講義で実際に私が書いたものがこちら。やっぱりゲームが好きなんですね。
Scratch (3) を利用したプログラミング教育
ここからは参加されている先生方としても成果物を提出させるということは強要せずに、興味のある方だけが取り組んでくださいといったスタンスで講義が進められました。
Scratchは子供向けのプログラミング教材の一つで、ウェブサービスとして公開されているため、インターネットにつながる環境であればGoogle Chrome などのブラウザを利用して誰でも無料で利用することができる学習ツールです。多くの言語に対応しておりポルトガル語や英語が母国語の子供でも抵抗なく利用することが可能です。
Scratch – Imagine, Program, Share
よっぽどのことがない限り大丈夫だとは思うのですが、田舎の学校などではインターネットがつながっていないところもあるようなのですが、そんな状況でも利用できる Scratch desktop というものも実は準備されています。こちらであればインストール型のアプリとして動作するためインターネット接続環境は必要ありません。
ダウンロードは以下のページからできます。
Scratch デスクトップ
https://ja.scratch-wiki.info/wiki/Scratch_%E3%83%87%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97
実際にScratchに触れてみるとこんなこともできるのか!といった驚きの声が先生方から上がっており、プログラミングに対する驚きと素晴らしさみたいなものをみなさん感じられていたように私には見えました。
須曽野先生自体がもともと数学と英語の教師ということもあって、線を描くという動作と繰り返しの制御を使って幾何学的な模様を描くといったことも行ったのですが、こちらについてもみなさん驚かれていましたね。
先生方だけではなく、こんなところで数学で学んだことが役に立つのか!といった実感を得る機会になると思いますので、子供たちにもぜひトライしていただきたい内容だなぁと個人的には思いますので、ぜひ一度体験してみてください。プログラミングが視覚化されているので、僕たちエンジニアが普段の仕事の中でどんなことを考えているのかが見えてくるかもしれませんね。
Scratchに関する記事はこちらにもありますので良かったら読んでみてくださいね。
https://flares.jp/digimag/take-a-teaching-license-renewal-class-making-fun-of-electric-fun/
ムービーメーカーを利用した簡単な動画制作
最後のセッションはマイクロソフトエッセンシャルに含まれていたムービーメーカーを利用した動画制作の講義でした。動画制作と言っても、写真をスライドショーのように並べて切り替わりのアニメーションとBGMとテロップやクレジットを付けるだけの簡易的なものですが、こんな動画がこんなに簡単に作ることができるのかと感じられた先生方も多かったように思います。
実際にその時に講習で作ったサンプルの作品は以下のものです。BGMなどの素材は全て先生が講義のためにご準備いただいていたものです。写真は午前中の講義に時に先生がデジカメで撮ったものです。早速Moodleにアップロードしていただいて先生方に共有をかけて頂いたものをみんなで利用しました。
ただ、残念ながら現在はマイクロソフトがムービーメーカーの公開を廃止してしまっているため、現在手に入れることができませんが、須曽野先生はインストーラーを持っていらっしゃるようだったのでご連絡いただければ提供いただける可能性はありますね。
ムービーメーカーからもう一歩進んでCamtasia辺りを使えるようになると、いよいよ学校の先生方も動画制作に着手できるようになります。私個人としてはそのあたりを目指していますので、いずれは動画制作のセッションを作ってはハンズオンで地域での動画制作講座みたいなものを行っていきたいと考えておりますが、まだずいぶん先のお話です。
Camtasia
https://www.techsmith.co.jp/camtasia.html
まとめ
ICT活用としての教育の第一歩として先生方が考えている世界はあくまでも「ICTツールが活用できる」というレベルを想定しているように思いました。裏返すと「ICTを使って自由にツールを作れる」というレベルまでは想定していないようですし、まったくそのレベルを求めてはいません。
しかし、実際に私が感じていることは「扱える」という程度を目指しているようでは決してツールを扱えるところまで到達できないと感じておりますし、「ツールを使って何かしらの作品を生み出す経験」を積んでおくことが最終的にICTを活用して実際に業務や校務を遂行する上で必要なレベルだと個人的に感じています。とは言え、敷居が高いのは事実なので、そのステップを掘り下げて一歩ずつ確実に成長の流れを見出す必要はあると感じましたね。
どちらにしても、現状の教員向けの研修制度の枠組みではCamtasiaなどの動画制作ツールを扱えるところまでは至らないと感じておりますので、時間が進んで、世代の移り変わりと合わせて全体的なITリテラシーの向上は必須だと感じましたね。
日本におけるデジタルネイティブの第1世代は僕を含めて現在30~40代を迎えており、仕事を構成する組織の一員として考えれば業務を引っ張っていく中堅どころです。デジタルネイティブ世代として時代に合った新しい指導手法を開発し、率先して広めていくことを僕たちがやっていかなければならないと感じていますので、着実に一歩ずつではありますが、実現に向けて歩みを進められるように日々努力を重ねていきたいと思います。
もしよければ、私の情報教育に関するビジョンをだいぶん前に書いた記事があるので良かったらこちらも見てみてください。この夏に三重大学の教育学部の大学院を受験しようと考えていて、その研究内容として取り上げようとしている内容が書かれています。
https://flares.jp/digimag/thinking-about-school-education-thinking-about-education-on-information-technology/
教員免許更新講習に関する記事
その他に受講した講義に関する記事はこちらです。よかったら読んでみてくださいね。
https://flares.jp/digimag/take-a-teaching-license-renewal-class-making-fun-of-electric-fun/